クラシックシェービング

近年、髭剃りの業界において、「クラシックシェービング」がじわじわと注目されつつあります。
現在、髭剃りの主流は、多枚刃の安全カミソリを使った「ウェットシェービング」か、電動シェーバーを使った「ドライシェービング」の2つです。
「クラシックシェービング」は、昔ながらの道具や方法を用いる髭剃りのことで、両刃カミソリとシェービングブラシを使って髭を剃るというものです。
20世紀は髭剃りの主流として使われていましたが、1970年代ごろから、アメリカやヨーロッパを始めとして、カートリッジ式の安全カミソリが普及したことで、それまで、髭剃り業界を牽引してきた両刃カミソの使用者は減っていきました。
両刃カミソリは、切れ味の良い1枚刃を使って髭を剃るのですが、当時は剃る人間やカミソリ本体の技術的な問題から、誤って口周りを切ってしまうというトラブルが頻発しました。
それゆえ、安全に髭が剃れるという安全カミソリが流行し、髭剃りの主流になっていきました。
しかし、近年になって、両刃カミソリも進歩し、初心者でも髭剃りが比較的に簡単にできるようになってきました。
そのことからか、安全カミソリや電動シェーバーよりも鋭い切れ味で深剃りしやすい点、替刃の安さやシェービングクリームのコストパフォーマンスの高さなどの費用の負担も少ない点なども要因となり、「クラシックシェービング」による髭剃りが注目されてきていると考えられるのです。
両刃カミソリの特徴・違い

両刃カミソリは、ホルダーに切れ味の良い1枚刃を装着すると、ホルダーの左右の隙間から刃先が出るので、その刃先部分を髭に当てて剃ることができます。
さらに、刃の角度も調整できるので、浅く剃るか深く剃るかを自在に変えることもできます。
しかし切れ味の良い1枚刃が髭の根元にダイレクトに届くため、深剃りしやすいメリットがありますが、デメリットとして、そんな切れ味の良い刃が肌に直接当たってしまうことによる肌トラブルや怪我を起こす危険があるのです。
これが両刃カミソリの特徴であり、市販の安全カミソリとの大きな違いだといえます。
両刃カミソリと比べて、安全カミソリは刃の角度を変化させたり取り外すことはできない構造です。一定の角度に複数枚の刃を並べた構造になっているので、安全に一定の深さで髭を剃ることができるのです。これが、安全カミソリが普及した最大の理由ですね。
しかし、それはつまり安全を考慮したことで、髭を剃るという面での性能を落としてしまっているのです。
髭が濃い人や伸びるのが早い人の場合、なるべく深剃りできるカミソリを使う傾向があります。
そんな人達にとって、従来の安全カミソリでは満足いく深剃りができず、むしろ深剃りしようとカミソリを強く押し当ててしまい、安全カミソリなのに肌を傷つけたり、肌荒れしたりしてしまうのです。
両刃カミソリなら、刃の角度を自由に変えることができるので、肌に当てる角度を調整して、より深く剃ることができるようになるのです。
使い慣れていくうちに、最も深く剃れて怪我もしにくい最適な角度を見つけることもできるでしょう。
真の髭剃りのやり方

「クラシックシェービング」といっても、昔ながらの両刃カミソリを使って髭剃りを行うというだけで、大きくやり方が変わるということはありません。
つまりは、両刃カミソリを使った「ウェットシェービング」です。
これまで私達が行ってきた「ウェットシェービング」は、市販のシェービングフォームやジェルを塗って、多枚刃の安全カミソリを使って髭を剃っていく形で、とてもシンプルに安全に髭を剃ることができるという方法でした。
それに対して、「クラシックシェービング」は少し手間が多く、難しいのです。
クラシックシェービングのやり方
①少し湿った温かいタオルを髭剃り部分に当てて、髭や肌を潤します。
②シェービングブラシとシェービングカップを温かいお湯で湿らせ、そこで専用のシェービングクリームをブラシで泡立てます。
③泡立てたシェービングクリームを髭剃り部分に適量つけて円を描くように優しく広げていきます。
時間をかけてゆっくりやると、シェービングブラシの毛先で毛穴深くの汚れをかき出せます。
④両刃カミソリをお湯につけて少し湿らせてから、カミソリの刃が30度程度で肌に当たるようにして髭を剃ります。
この際に、髭の生えている方向に優しく剃ることがポイントです。
⑤順剃りで剃り終えてから、剃り残しがある場合、カミソリを逆に向けて下から上に剃っていきます。
縦方向ではなく、斜め45度くらいの角度で逆剃りすると、肌を傷つけにくいです。
⑥順剃りや逆剃りで剃り残しが出やすい顎下や首下の髭は、もう片方の手で皮膚を伸ばしながら丁寧に剃っていきます。
⑦髭を剃り終えたら、ぬるま湯で髭やシェービングクリームを洗い流します。さらには、冷水を使って洗い流すことで、毛穴を引き締めましょう。
⑧髭剃り後はアフターシェービングローションを髭を剃った部分に塗って、肌を保湿させてダメージを抑えましょう。
これが「クラシックシェービング」の正しいやり方です。
このように、基本的には「ウェットシェービング」と同じように髭剃りを行うのです。
しかし、シェービングフォームをクリームの状態から泡立てて作ったり、切れ味の良い両刃カミソリで順剃りや逆剃りなど細かく剃り方を変化させたり、通常の「ウェットシェービング」と比較しても危険で難しく、奥が深いのです。
両刃カミソリで初めて髭を剃ると、大抵の場合、皮膚を切る、怪我するなどの危険はつきものです。この危険が両刃カミソリから安全カミソリへの移行を促進させたともいえますが、扱いに慣れてきて上手く剃れるようになると、それは最高の剃り味に繋がり、脅威の深剃りを体験することができます。
髭剃りを"極める"という観点から、「クラシックシェービング」は"真の髭剃り"と言えるでしょう。